夢千代日記を読んで!

夢千代日記を読み終わりました。最後に解説者と作者との会話から。
終戦の年15歳の軍国少年だった作者は1945年8月15日敗戦の日海軍兵学校の病院に赤痢で入院していて、戦死を免れた一人だったようです。しかし、本人は下半身は軍国主義で上半身に民主主義を接ぎ木していると言う。「夢千代の場合は体内に終わったはずの戦争を抱え込んでいた、ピカと言うそれは戦後になっても消える事無く、彼女を苦しめ続けた」
海軍兵学校時代に彼は原爆が落とされて間もない広島の街を何度か見ている。以前とは全く違う『呆れるばかりの荒野』になっていた。なま暖かい雨となった1945年8月20日夜、一面の荒野に何千もの小さな青い火が燃えていた、何万人もの死体から流れ出た燐が燃えていたのです。茫然と見ていた仲間の一人が声をあげて泣き出した。彼は広島出身で、燃えている青い火の1つが母親か妹に見えたのかもしれない。この光景は一度だって忘れた事が無く、あれは地球の終末の光景で、世界の臨終の景色であった。この体験から哀切なドラマ『夢千代日記』が生まれた。あの雨の降る廃墟の中に赤ん坊の泣き声を聞いたと主張する者もいるが、その赤ん坊が夢千代だと言う解釈も成り立つ。
 アメリカ人は『リメムバー・パールハーバー』そして、日本人は『ノー・モア・ヒロシマ』と唱えている、軍国少年だった彼だからこそ、加害者体験を忘れないで被害者体験を語る。『パールハーバー』の結果として『ヒロシマ』を忘れないために「夢千代日記」が置かれた。
                    作 者・早坂 暁
                    解説者・佐高 信